脳卒中リハの専門家・竹林教授に聞く!上肢サポートウェアが変える麻痺側管理
こんにちは!ケアウィルコミュニケーションチームのハルです。
ケアウィルは、あなたの「着たい、選びたい、着て人と会いたい」という意思を第一に尊重した服づくりを目指し、「ケア衣料※」という専門ブランドで、ものづくりをしている会社です。
弊社では現在、以下の製品を販売しています。この度、新たな新製品が加わることとなりました!
傷病後の腕をしっかりホールド!性別・季節を問わない日常着が誕生!
それが「上肢サポートウェア」です!
「上肢サポートウェア」は、脳血管障害や整形疾患(骨折、腱板断裂等)により上肢に不自由を伴う方のために開発された日常着です。不安定な腕を体にしっかりとホールドしてくれます。
障害が残ったり、怪我を負った早い段階から着られるのが特徴です。腕のホールド力に加えて、一人で着られること、季節を問わずにオールシーズンで、男女を問わず着られるといったことにもこだわりました。発売は今春。もうすぐです!
また、4月からの発売に向け、この製品を試用してみたい病院や施設からのお申し込みも受け付け中です!ご関心をお持ち下さった方は、こちらのリンクまでどうぞ↓↓
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc3WIQYOF7eJqLOfqwvdENLFHccaneMQDpVAgYwhrO1is-LNQ/viewform?usp=header

「上肢サポートウェア」誕生のきっかけ
「上肢サポートウェア」は、弊社の「アームスリングケープ」の姉妹品として作られました。
「アームスリングケープ」とは、腕を骨折した際に使用する三角巾と、服であるケープが一体化した製品です。この製品は脳血管障害の方や腱板損傷といった肩や腕の整形疾患の方を主な対象としています。首を痛めない・肩を冷やさない・一人で着られる特徴で、2021年のグッドデザイン賞を受賞しました。
現在、全国の病院や施設からのご紹介で、400名以上の当事者の皆さんが、ご自宅やリハ病棟で着用して下さっています。
着用者の方からは、「不自由かつ痛みのある腕を安定させることができた」「暖かく過ごすことができる」とのお声を頂いています。同時に、ユーザーさんや医療従事者の方からこんな声もありました。
そこで、これらの声に応えるべく、「上肢サポートウェア」の開発が始まりました。
開発にあたり、特徴の一つでもある「傷病早期から着用できる機能」の開発には、専門家によるアドバイスと機能の検証が重要でした。
そこで今回、ケアウィルは大阪公立大学と東京都立産業技術研究センターとで製品開発を行い、三社の共同研究を行うことにしました。また、この取り組みは川崎市の「令和6年度川崎市福祉製品等開発支援補助金」に採択され、まさに、産公学の連携で製品開発が進められてきました。
本記事では、共同研究に参画してくださった、大阪公立大学作業療法学専攻教授・竹林崇先生にお話を伺いました!
“作業療法をもっと身近に“脳卒中リハの専門家・竹林教授
竹林先生というと、こちらのネットニュースでご存じの方も多いのではないでしょうか?
SNSで「片手で皿洗いできる自助具」や「ペットボトルの蓋を開ける道具」を紹介した投稿は大きな反響を呼び、ニュースサイトに度々取り上げられています。こうした発信は、患者さんの自立を支援する作業療法の重要性を広く知らしめるきっかけにもなっています。
そして医療専門職の業界では、脳卒中リハビリ分野の研究において、作業療法士として第一線でご活躍されています。主な研究分野は、脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーション。ロボット・電気刺激・装具・CI療法といった様々なアプローチの研究や作業療法におけるエビデンスの構築のほか、論文や書籍も多数執筆されています。
私も作業療法士として、竹林教授の講演会や、論文・書籍にお世話になっている一人です!
回復期病棟の入院セットに入っていてほしい1枚です
ーさっそくですが、実際に上肢サポートウェアを着てみた率直な感想を教えてください!
アームスリングケープと一緒で、腕の重みがうまく分散されますし、男性の僕でも着られます。他の療法士からも長時間つけられる、吊るさないので首回りがとにかく楽という感想を聞いています。あとはすごく簡単に着られるので、そここそが求めていたと言いますか。基本的に、自分一人で着けられない・着けても変な位置になってしまう三角巾やアームスリング着用時の悩みを解決できるというのが良いなと思いました。
―デザインはいかがでしたか?
実は初期の試作品では、釣りのときに着るベストみたいになるかと心配していましたが…。デザイナーさんが入るとすごいですね!朝起きてこのウェアを着てしまえば一日中対応できるので、何度も脱いだり着たりする必要もないのがいいですね。麻痺の状態に応じて、回復期リハビリテーション病棟の入院セットに入っていてほしい1枚だなと思いました。
―入院時から使えると、麻痺した腕を自身で管理する練習にもつながりそうですね。
そうですね。麻痺した腕というのは、力が入らずにだらんとした状態です。
抗重力位(*1)の時は、肩の関節に腕の重みがかかり、腕をサポートしないと肩の筋繊維が傷んでしまいます。二次的な痛みやQOLを下げるという報告もあります。麻痺側上肢の自己管理の獲得は、関節拘縮(*2)等の二次的障害や廃用手(*3)にならないためにも重要です。
ー“麻痺側上肢の自己管理の獲得”という面から、上肢サポートウェアの利点はどこにあると思いますか?
麻痺した腕を自分で管理するには、①固定性の向上②1人で着脱できること③着脱が簡便であることが大切です。
上肢サポートウェアは、まずアームスリングケープに比べ、腕の固定性が向上しています。自分で確実に着られることも良いですね。あとは安易に付け外しの切り替えができること。
基本的にアームスリングや三角巾はつけない方がいいのですが、そうすると麻痺した腕を忘れてしまう問題もあります。そのため着脱の切り替えが安易にできるというのは重要だと思います。
自分が生きている間に患者さんに貢献できることがしたい
―脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチの研究をされるきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは、職場の方針が「脳卒中後の上肢麻痺の研究」に切り替わったことです。ただそれより前の学生の時から、麻痺に困っている方をたくさん存じ上げていたというのが背景にあります。臨床実習で“未来の患者さんのために私の手をたくさん触って良い”という患者さんもいらっしゃいました。そうした機会もあり、脳卒中後の麻痺側上肢の研究にしっかり取り組みたいと思いました。
ー根底には現場の患者さんの存在があったのですね。
そうですね。麻痺側上肢の研究を始めた頃は麻痺の完治を目標にしていましたが、はじめの頃は目に見えた進歩があったのですが、2015年以降はやりつくした感が出てきたんですね。これでは自分が生きてる間に麻痺手の回復を完遂するのが間に合わないかもしれない、それなら今の患者さんにも貢献できる、QOLを上げるような福祉用具の新しい試みをしたいと思うようになりました。
“最大公約数”のおしゃれなら多くの人が生活の一部として着られる
今回の研究は、ケアウィル・東京都立産業技術研究センター(以下、都産技研)・大阪公立大学という産学公連携の研究となっています。
ー今回の共同研究に参画しようと思ったのはなぜですか?
1つめは患者さんのQOLを上げる新しい取り組みがしたかったこと、2つめはケアウィルさんだからですね。
―嬉しいです!“ケアウィルだから”と思ってくださったのはなぜですか?
作業療法士だったら誰しも、おしゃれな福祉用具みたいなものを考えると思うんですが、その“おしゃれ”が難しい!作業療法士が考える“おしゃれ”な福祉用具は、ちょっとアーティスティックでエッジが効いていることが多いなあと思っていて(笑)
ー作業療法士のエッジ。なんかわかります(笑)
いわゆるリハビリテーションとエッジが効いているデザインは相性があまりよくないなと思っていて。ブランドでいうとユニクロや無印良品のような、“最大公約数のおしゃれ”だと、多くの人が生活の一部として着られる、そういうデザインが大事だなと思っていました。そんなときに、はじめてアームスリングケープを見たんですね。非常に興味が湧いたし、落としどころがすごく美しいなと思いました。
―代表・笈沼とはXでのやりとりがきっかけだったそうですね。
アームスリングケープの投稿をした際に、お返事をいただいたのが最初ですね。
笈沼さんの姿勢にも共感します。彼は、商品を世に出す前に投資する場所が広告じゃなく機能面。リハビリテーションにおけるデザインの中にはその機能面が重要だと思っています。彼が作る道具は何かしらの解決したい問いがあって、その問いを解決する機能性とデザイン性を付与してきっちり形にしている。その姿勢を見て、一緒にお仕事をしたいなと思いました。
産学公の強みが重なって長く寄り添う製品になる
ー共同研究では、上肢サポートウェアについてどんな研究テーマにされるのでしょうか?
“機能面をすべて含んだ状態で着た人がどう思うか”という心理評価の部分を担当します。主観の部分は道具の選択において重要な部分になります。
具体的には、三角巾/アームスリング/上肢サポートウェアの3種類に対し、着脱にかかる時間や、1時間着た後の着心地といった項目の量的データと個別の質的データをとる予定です。質的データをとることはありますが、そういった量的データのエビデンスもとりたいという代表の意向は大事なことだと思います。
ー産学公連携による研究だからこそ感じた良さを教えてください。
都産技研さんからは、都産技研さんの機器や装置によって幅広い数値がとれることです。こうした高額な機器を使用する研究は、我々療法士が一からやるのは難しい。そこに、どういった臨床場面でこの製品が使えるか、心理面への影響はどうか、どういった指標をとれば医療従事者にきちんとした指標を提供できるかは、作業療法士という立場から提供できると思います。
ーそれぞれの強みを活かすということですね。ケアウィルからは?
ケアウィルさんからはビジネス的な観点ですね。得られる指標をどういう風に使うかという戦略です。製品自体は対象者の方の幸福に対して提供するものですよね。ただそこでいいものを開発しても、売れないとやめないといけないので、開発するのと同じくらい売る努力もすごく大事だなと思っていて。それは大学の研究者だけではできないし、技術系の人だけでもできないので、ケアウィルさんのように旗を振る人が大事だなと思います。
―単独ではなく各自が強みを持ち寄って連携することで、エンドユーザーに製品を届け続けることができるんですね。
産・学・公の3つが加味されて、色々な戦略が得られるというのは有益だと思いますし、それによって、本当の意味で、対象者に長く寄り添う商品ができるんじゃないかと思います。
私自身もロボットの開発に携わってエビデンスも残していましたが、途中で立ち行かなくなってしまったんですね。それをすごく反省していて。
“いいものを作る”ことが僕の役割だと思っていましたが、そのロボットがなくなってしまったら、対象者の方の機会も奪われますし、臨床の医療従事者の方にも迷惑をかけてしまう。いいものを作るだけは罪だなと最近は思っています。
ー今回の研究が、上肢サポートウェアの今後にどのように活かされてほしいですか?
上肢サポートウェアの対象は、おそらく回復期リハビリテーション病棟といった“医療”の現場がターゲットになると思います。医療現場でこの製品の価値を感じてもらうとなると、今回の研究で数値としての結果がでることが、医療従事者の意思決定の材料につながると思います。都産技研の山田さんの研究からは製品の安全性等の部分を、私の研究からは商品の良さを感じてもらう役割が大きいかなと思っています。
ーありがとうございました!
“研究”というと、専門的で難しいイメージもありますが、竹林先生のお話や日々の発信は、その研究が私たちの生活にどう関係しているかを気づかせてくれます。今後も臨床現場で得られた効果を数値として残すための研究が続けられていくことで、臨床から生まれた疑問を解決する流れができ、現場と研究、そして生活がさらに混ざり合っていくように感じました。
次回!被服学研究者の山田博士にインタビュー
次回は、東京都立産業技術研究センターの山田巧博士にお話を伺います。
山田先生は、「被服学」という人と衣服の関係性について研究されています。聞き慣れない「被服学」という学問の面白さや、今回の共同研究に関する想いについて伺ってきました!お楽しみに!